詩と詞と雨が

し、らしきものを垂れ流します

矢光る

美術館 青い芝生 ミネラルウォーターのペットボトルに反射する光

ガラスの中の世界はいつもより色めき

頭の中の音楽はできるだけポップに

あなたの中の景色は現実を越えていく

 

音の 色の 匂いの輪郭が浮き上がり

水色の中の月にもきっと気づくでしょう

 

人混み つなぐ手と手 行き交う波の切れ間を見つけ路地から飛び出す黒猫

鏡の中の自分は昨日より逞しく

右手の中の温度は少しだけホットに

あなたの中の炎は激しさを増していく

 

人の 空の 社会の優しさが駆け上がり

往来が放つ無数の矢にもきっと気づくでしょう

 

 

神秘的

地下室の暗がりが優しい季節

回廊から響く知らない猫の鳴き声に

一時耳を澄ましてみよう

空の色味や山の匂いも

今では書物の世界の記憶

いつかこの身に木漏れ日を

いつか一人の友だちを

冷たい熱にまどろみながら

時間の淵に零れて落ちる

 

密室の安寧と壊れた花瓶

海底に広がる朽ち果てた葡萄畑で

一時過去を想ってみよう

陸の時代や人の動きも

全てはわたしの自由な虚構

いつかこの地に微笑みを

いつか一つの安らぎを

冷たい身体でまどろみながら

時間の淵に零れて落ちる

時間の淵に零れて朽ちる

 

 

◎ライトシャワーが注ぐ頃に

残響する言葉と仕草

まるで遅効性の毒みたいだね

特別なことは何ひとつないのに

冷蔵庫の中の林檎が傾いた

踊れない季節が過ぎたら

新しい光が生まれるよ

道路脇の雪がありったけの熱を吸い込むように

息をする君と僕はきっと恋に落ちるはず

 

それで明日はどこへ行こうか

ご機嫌な君はおしゃれに着飾って

眠れない夜はもうないんだと気付かせてくれる

 

躍動する記憶と鼓動

数を読み上げる神様みたいだね

この瞬間もいずれ消え失せるのに

鳴りやまないビートが時間を止めた

情けない僕らが進めば

新しい悩みも生まれるさ

窓越しの星屑が片っ端から降り注ぐように

捧げ合う君と僕はひゅっと恋に落ちるはず

 

それで明日はどこへ行こうか

ご機嫌な君はおしゃれに着飾って

眠れない夜はもうないんだと気付かせてくれる

 

それで涙はいつか枯れるか

うつむいた君はそれでも着飾って

眠れない夜はもうないんだと 僕はその時はじめて気付く

 

 

◎霧の中

砂の音色が流れる小川

光は注ぎ 祈りは透過する

逆行する命は力強く

飛沫は霧となり大地を恵む

風が撫でる木々の葉擦れと

森の奥では獣のにおい

それぞれが持つ臓器と歴史

それとは別の原始の時計

巨大な愛がしるしを刻む

 

循環が羅列する記憶の栞

茂みの中から覗くうさぎや

群れから外れたムクドリの子も

遠く炎の営みを嗅ぎつつ

畏れを抱いて今日を欲する

死生の区別は霧の中でも

其処此処の本能が叫ぶ

     煌めきを、と

 

 

幻だとしたら

並行世界を夢想するなんて愚かだと思ってた、そんな立冬

冷たい太陽がぼくを照らし

チャーリーブラウンの弱音だけが友だちだった

平熱が嘘みたいな温度で

それはきっと心の問題なんだろう

やせ細った二の腕が孤独を知らせる

ああ ビルの連なりが夕焼け色に染まっていく

暖かい太陽が彼らの一日をねぎらうように

これが幻だとしたら、それはそれで哀しいね

 

ろ過された子どもたちは何処へ行くのだろう、とか何とか

ネオンサインが街を彩り

戯言を重ねるぼくだけが宙に浮かんでいた

笑い声が閃光弾みたく眩しくて

それはきっと心の問題なんだろう

微熱を帯びた瞼が愛情を語る

ああ 光の瞬きが空の暗がりに融け込んでいく

ぼくも彼らの一部だという事実を告げるように

これが幻だとしたら、それはそれで哀しいね

これが本当だとしても、それは変わらぬ哀しいパノラマ